Chapter5-6-3 珍しい常染色体のトリソミーや染色体の構造異常
珍しい常染色体のトリソミーや染色体の構造異常
まれな常染色体のトリソミーというのは
13番,18番,21番,X番,Y番染色体以外のトリソミーのことを指します.
非モザイク型,つまり,完全型では通常,生命を存続させることが難しいため
羊水細胞における侵襲的な出生前診断の結果として得られる,
といことは非常にまれです.
モザイク型では,まれな常染色体トリソミーが子宮内発育遅延や
胎児死亡,胎児モザイク,およびUPD(片親性ダイソミー)と関係しています.
*UPD(片親性ダイソミー)
トリソミーレスキューの結果,もともと二重にあった染色体同士が残ってしまい
染色体の数自体は正常なのですが,同じものが二つあることで問題が生じることを
いいます.
たとえば,ヒトは常染色体劣性の病原性のある遺伝子変異を複数持っていると
言われていますが,同じ染色体が2本あるわけですから,常染色体劣性遺伝性疾患の
発症率はあがりますよね.
標的染色体と基準染色体との比較に基づくcffDNA NIPTはすべて,
基準染色体中のトリソミーまたはモノソミーまたは大きなCNVの影響を受けることになります.
*CNV
ゲノムの中には同じ配列が繰り返しされている部分があります.
このうち,比較的大きな1Kbp以上の長さの領域の繰り返し(リピート)の数を
CNVと呼びます.
ゲノムDNAの数の繰り返しの数の種類は,他に
indel,
VNTR(Variable Number of Tandem Repeat),
マイクロサテライトなどが知られているのですが
通常これらはすべて1Kbp以下のサイズとなっています.
全ゲノムの配列決定と解析は,これらの異常な結果の原因となる生物学的要因を
理解し,偽陽性率を減少させることにつながるのです.